相談解決事例

その他労働問題

「辞めたい」と言ったら、会社から「損害賠償請求」


料理店で働くコックさんからの相談:

この店では、突然シフト変更が行われるなど変則的なシフト勤務が常態化していました。こんな状況では、働き続けられないと判断し、退社を申し出たところ、「人手不足で辞めさせることはできない。辞めたければ代わりの者を紹介しろ」と言われ、数人のコックさんを紹介し、退社したところ、社長から「契約違反だから損害賠償をする」と言われ、賃金の未払いが生じました。雇用契約書を確認すると「試採用期間中は契約期間の途中での解約はできない(民法628条)」と記載されていました。しかし、民法628条は「やむを得ない理由」があるときに契約期間中の解除を求める規定です。会社はこの条文を勝手に解釈し、損害賠償を求めてきました。この雇用契約書は、損害賠償の額を予定する契約の禁止を定めた労働基準法16条にも違反しています。まず、賃金の不払いについては、労働基準監督署を通じて請求することにより支払わせることができると思います。

『労働者の損害賠償責任について』:労働基準法は「賠償予定」を禁じていますが、労働者が故意または過失により、実際に会社に損害を与えた場合には、その損害を賠償する義務が生じることがあります。しかし、一方で、会社は労働者の働きにより利益を上げており、危機管理の義務もある事から、業務上のリスクを全て労働者に負わせるのは不公平です。そこで、多くの裁判例では、損害の全額を労働者に負担させることは適当でないと判断しています。具体的には、労働者本人の責任の程度、違法性の程度、会社が教育訓練や保険加入などの損害発生の防止措置を取っていたか等の事情を考慮して、労働者が負担すべき賠償金額(割合)が判断されます。また、労働者に損害賠償責任がある場合でも、会社が一方的に給料から賠償額を天引きすることは、賃金の全額支払いの原則(労働基準法第24条)に違反する行為となります。

『契約期間の定めがあるときの退職』:契約期間の定めがある労働契約(有期労働契約)の場合、契約期間も契約の内容になっていますから、契約期間の満了前に退職することは契約違反となります。したがって、労働者は勝手に退職することはできません。就業規則に、契約途中であっても退職できる定めがある場合には、それにしたがって退職できることになりますが、特段の定めがない場合には、なるべく合意解約が出来るように、十分話し合う事が大切です。ただし、使用者の理解が得られなかった場合であっても、やむをえない事情があるときに限り、労働契約の解除を申し入れることができますが、それが労働者側の一方的な過失による場合には、使用者から損害賠償請求をされることもあります(民法第628条)。また、1年を超える有期雇用契約を結んだ労働者は、当該労働契約の初日から1年を経過した日以降は、使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができます。

※契約期間の定めのない労働契約を結んでいる場合、原則として労働者は、理由を問わずいつでも労働契約の解除を申し入れることができます。民法では、申し入れから2週間経過すれば、使用者の承諾がなくても労働契約は終了する(民法第627条第1項)とされています。